無月。
 
 
 
■ 秋は苛酷である。
 日は短く、外に出るとすでにしてネオンが灯っている。
 雑踏に紛れ思い出すのは誰かの待つ、あるいは待たない自らの部屋である。
 何がカナシクてこのようなことを続けているのか。
 生活とはなんなのか。
 本質的なことを考えると躯によくない。
 窓を開けると、月はなかった。
 港の方角の、高層ホテルの大きな窓に、オレンジ色の明かりが燈っている。